父親はオートバイのエンジン部品を作る会社を経営していました。
しかし、私が高校1年の時に、父親の会社は倒産。家族は経済的な苦労を強いられることになり、私も高校時代はアルバイトに明け暮れました。
それでも学校の成績が良かったことから、学歴がない父親の希望もあって、大学を受験。
見事に合格しましたが、授業料を払うのに苦労をすると思っていたので、入学時に夜間大学に切り替えて通いながら働くことにしました。

働き口は、父親の会社の残務整理をしてくれた税理士の先生が斡旋してくれました。
私達家族の生活をあれこれと助けてくれた恩人で、先生も若い頃に経済的な苦労をし、その時に助けてくれた人がいて、
税理士になって独立しようやく恩返しができる身になった時には、その人は亡くなっていたという話です。
その人への恩返しの意味も込めて、私達家族を助けてくれたと話してくれました。

先生の紹介で小さなソフトウェアハウスに入社。アセンブラでプログラムを書いていたのが、私のエンジニアライフの出発点です。

私がエンジニアになった当時は、コンピューター文化が花開こうとしていた時代。
マシンが8ビットから16ビットになり、DOS/V機が登場する前夜。
会社の先輩と一緒に会社にあったPC88を使って、夜な夜な技術の習得に明け暮れました。

その先輩が独立して会社を作ったので、私も付いていって副社長を務めていましたが、
その社長がメンタル面の健康を崩したのをきっかけに、独立を考えるように。
とはいえ、会社を作るにも何をすればいいか分からない私は、途方に暮れそうになりました。
そのとき頭をよぎったのが、昔お世話になった税理士の先生の「困ったことがあればいつでも相談に来なさい」という言葉。
先生の言葉を信じて、10年ぶりに会いに行きました。

事情を話して会社を作りたいと伝えると、
先生は「買ってくれるお客様はいますか？」と聞くので「いると思います」と答えました。
先生は続けて「一緒に働いてくれる仲間がいますか？」と聞かれ、私が「いると思います」と答えると、
「それでは会社を作りましょう」と言いました。結局、先生は会社設立に必要な資金を提供してくれ、設立に必要な事務も全てやってくれました。
先生には、今もアルカディアの顧問税理士をしていただいています。

先生との再会が私を変えました。
それまでは自分が傷付かないように、人を信じないで世の中を斜めに見る人間でした。
「人情」を馬鹿にする冷たい機械人間だったと思います。
高校生から経済的に苦労して、働くようになってからも「出世して見返してやる！」というハングリー精神でがむしゃらに突っ走っていました。
しかし、アルカディアを創業する頃には、結婚して子供が生まれ、家庭を持つようになって、考え方が変化していることに気が付きました。
それが、アルカディアを創業するきっかけの一つ。先生と再会して、生まれ変わった自分を素直に受け入れることができました。

そして、自分の行動原理も変わりました。
自分がやりたいから働いているのであって、誰かを見返すために働いているのではない。
今の自分が反骨精神で動いているのではないことに気が付いたことが、
今の会社のスローガンである「人間らしい、ITエンジニアリングを」に繋がります。
先生との出会いと子供を持ったことで、人の温かみとありがたさを心底から知ることになりました。

みんなが自然体で長く働ける会社です。
人生は色んなことが起こります。時には予期しないトラブルに見舞われることもあるでしょう。
エンジニアはタフな仕事。メンタルを壊す人を何人も見てきました。
周囲も自身もあまり追い込まずに、リラックスしながら集中して働くのがアルカディアのスタイル。
病気や怪我で遮二無二に働けなくなっても、会社や仲間が見捨てない組織にしたいです。
可能な限り価値観を共有できるメンバーと働きたいので、やみくもに会社を大きくする気はありません。

自分が作ったものが動く。エンジニアとして働く魅力は、この一点に尽きると思います。
家族、特に子供に「あれを作った」と自慢できるエンジニアになってほしい。
だから社員には「誇りを持てる仕事をしよう」と言っています。
私は自分が培ったスキルでITを欲している会社に寄り添いたいと考えています。
エンドユーザーの顔が見える距離で、人間らしいITエンジニアリングを提供するのが夢。「町のIT屋さん」になるのが、私の最終目標です。

クルマを運転するのが大好きです。
どんなに嫌なことがあってもクルマを運転すれば、スッキリと忘れられます。
中でもイタリア車が好きで、今の愛車はアルファロメオのジュリア。
運転を楽しむために、できればマニュアルで乗りたいのですが、ジュリアにはMT車がないので、仕方なくAT車に乗っています。
アウディも所有していますが、こちらはもっぱら仕事用。趣味でクルマを転がすなら、イタ車に限りますね。

将来は、クラシックなアルファロメオに乗ってみたいですね。
若い頃、猛烈に憧れていたけれども、経済的な理由で高値の花だった車に乗りたいです。
定年が近付いたら、仕事量を減らして、ガレージでクラシックな車いじりができたら幸せですね。
そのためには、会社を継承してもらえるように組織化を進めて、引き継いでくれる人材を育成していかなければなりません。
まだまだやることは沢山あります！